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《読書は自己投資》と考えるあなたが、今すぐ採るべき5つのアクション

自己投資として、もっとたくさん本を読みたい!と思いながら、仕事に追われ、子育てに追われ、スマホに時間を奪われて、なかなか読書に時間を割けていない…という悩みを持つ人は多いものです。
 
ひょっとすると、あなたもこんな悩みをお持ちかも知れません。

  • 仕事が忙しくて時間がない
  • 細切れに読んでいるので、断片的になってしまい、理解がまとまらない
  • 一度の実行はできるが定着していない
  • 難しい本だと読み進めるのが大変

世の中で速読なるものが注目される一つの理由に、この「読みたいと思っている本が、時間がないために読めない」ということもありそうです。
実際、2008年に拙著『フォーカス・リーディング』が出版された時代というのは、まさにそういう空気が時代を満たしていました。
 
ビジネス書ブームでしたし。
アルファブロガーと呼ばれるフォロワーの多い発信者が、こぞって「このビジネス書を読め!」なんて煽っている時代でした。
 
ただ、たくさん読んでいる人が成功しているわけではありませんし、理解力や情報分析力が高いわけでもありません
当然、あなたが速読でたくさん読めたとしても、それで仕事ができるようになるかは不明ですし、読書力が上がるわけでも、記憶力が上がるわけでもまったくありません。
 
読書は投資だ!大切だ!── そう考えるのは素晴らしいことですが、「だから多読だ、速読だ」と考える必要はありません。
もっと合理的に読書の投資対効果を考えてみましょう。

目次

読書のリターンはどこから生まれるか?

投資としての読書という場合、当然、何かをリソースとして投下して、何かをリターンとして手に入れるわけです。
下の図でいいますと、下の半円部分をリソースとして投下しつつ、上半分に書かれている「現在の自分の能力etc」を総動員して読書からのリターンを手に入れます。

目標達成のために活用すべき6つのリソース

まず下半分に注目。たとえ大枚をはたいてたくさん本を買おうが、高額な本を読もうが、時間を投じなければ当然リターンは得られませんよね…。
 
速読の価値を盛んにアピールする人達が「少ない時間で、最大のリターンを!」と主張するのは、この「時間を投じる」ことの難しさをよく理解しているからかも知れません。
 
ですが、投下するリソースは下半分だけではありません。上半分にも注目して欲しいのです。
本を読むには、大前提として「本を読む力」すなわち「前提となる知識」と「読書スキル」が必要です。ここで「スキル」というのは、自動的に発動される能力のことを指します。
 
読書の理解というのは、単に著者の書いていることを受動的に受け止める作業ではなく、自分の読書スキルと既有知識を総動員して能動的に解釈し、イメージを結んでいく作業なんですね。
さらに、後で解説する読書ストラテジー学習ストラテジーというもの(簡単にいえば勉強法、例えばどういうノートを作るかとか、どういうタイミングで復習するかなど)が「システム」として掛け合わされることになります。

読書の投資対効果を高めるための考え方

以上のことを踏まえ、読書のリターンというのは次の式で表現することができます。

読書から得られるリターン=書籍の価値×読書力×システム

さらに「読書の価値」を読書の投資対効果(ROR:Return of Reading)として考えると、右辺を「時間コスト」で割らなければなりません。(速読のパワーはここでも発揮されますね。分母が圧倒的に小さくなります。)
そういうわけで、上に示した式は次のようなRORの計算式として完成されることになります。

・・・とここまで来ると、読書の投資対効果を高めたい、時間がない中でも効果的な読書をしたいという場合、単純に「たくさん読むぞ!」とか「速く、いっぱい読むぞ!」という単純な話ではないことが分かるでしょう。
読書の投資対効果を高めるためには、分母である時間コストを小さくする作業と、分子である得られる機能(メリット)を大きくする作業という2つの方向が必要なのです。

長期的に、確実に投資対効果を高めていくための5つのアクション

投資対効果を長期的に、確実に高めていくためには、なんと言っても分子の部分、つまり「書籍の価値×読書力×システム」を高めていくのが一番です。

1.量を取ることを諦めて質を取る

これは「書籍の価値」を高めるのと「読書力」を高めるのをセットで実現するアクションです。
そのために必要なアクションは次の2つ。

1-1.古典作品を手に取る

古典なら何でもいいという訳ではありませんが、少なくとも時代の移り変わりを越えて読み継がれている本は、時代も人種も文化も越えて受け容れられる価値があります。それだけを考えても読む価値があると分かります。
ただ、読み手の力量や、受け止めるだけの背景知識がなさすぎると、「???」という感想しか得られないことがあります。ですので、ひとまず有名どころを押さえるところから初めてみるといいでしょう。
 
こちらは私が常々、読書会の課題図書にするなど、多くの方々にお勧めし続けて来た本です。

ソクラテスの弁明
学問のすすめ
生の短さについて

ここでなぜ岩波文庫ばかりなのかは、次の1-2に絡みます。

1-2.自分の読書力(読書スキル)を越えた本に挑む

これは読書教育研究で、読書力・読解力(読書スキル)を高める王道として語られること。楽に読める本は、新しい知識をサクッと吸収することには役立ちますが、自分自身を高めることにはつながりません。
 
思考力も、論理力も、語いも…あらゆる読書スキルは、自分の力量を越えた本に挑み、著者の胸を借りて修練することから高められるものなのです。もちろん、漫然と一度読むだけでは時間の無駄になります。ひとことひとことを吟味し、何度も通して読むことによって初めて力になることは言うまでもありません。
難しい本を、スムーズに処理出来ていると実感できるまで反復して読むことで、次に同じレベルの本に挑むとき、その本が以前より楽に読めることに気づくはずです。それこそが読書スキルが高まった証拠なのです。
 
ちなみに、1-1で岩波文庫ばかりを挙げたのは、日本語が美しく、使われる語いが平易ではなく、必ずしも読みやすい文章になっていないからです。「リーダブルでない」ことで、読書力が高まるものなのです。

ちなみに、フォントサイズを大きくし、読みやすいキレイなフォントにするだけで、「リーダビリティ(読みやすさ)」が上がります。もともと読書に苦手意識が強い方は、そういった書籍を選ぶとハードルが下がります。
しかし、読みやすいということは、ひっかかりが少なく、脳みそを省力化して使うことができるため、学習効果が下がると考えられるのです。

2.if-thenプランニングで読書に投下するリソースを増やす

私たちの貴重な時間は、気がつくとラテの泡のように消えて無くなる性質があります。
特にスマホの登場で、ちょっとした時間にもメールを確認したり、そのついでにウェブサーフィンに興じたり、SNSでコメントしたり…といった機会が増え、あとで想い出そうとしても、その時に何をやっていたか想い出せないレベルで無為に過ごしてしまうことが増えています。

なので、まずは毎朝「もし、電車を待つ(人と待ち合わせる)時間ができたら、この本を読む」というように、隙間時間を読書に充てることを、自分に対して宣言するところから始めてみてください。
 
「もし、○○なら××しよう」と決めることを「if-thenプランニング(※)」と呼びますが、あらかじめ自分に宣言しておくことで、目標とする行動が起こしやすくなるという効果があります。その日一日の動き(動態)をイメージして、隙間時間に読めそうな本を一冊、カバンに忍ばせておくと効果的です!

※if-thenプランニング

Gollwitzer(1999) ,Gollwitzer & Sheeran(2006) 等によって提唱されるモチベーションを維持し、習慣や行動の変容を容易にする効果があるとされている手法。

  • Gollwitzer, P. M. (1999). Implementation intentions: strong effects of simple plans. American psychologist, 54(7), 493.
  • Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation intentions and goal achievement: A meta‐analysis of effects and processes. Advances in experimental social psychology, 38, 69-119.

時間確保の目標!

どれくらい時間を確保したらいいかは、なかなか難しい問題です。
ですが、45分の読書タイムと15分の振り返りタイム、合計45分を確保できると、読書による自己投資は捗るはずです。
1日に45+15分、すなわち1日の3%の時間を読書に使い、夜寝る前にたった1%の時間を振り返りに使うわけです。1日の1%;24時間×60分×0.01=約15分ですから。

ちょっとした時間として、15分を掘りおこすのは、それほど難しくないはずです。電車やバスの待ち時間、乗っている時間、友達との待ち合わせ時間、プロジェクトとプロジェクトの間の時間などなど…
今、恐らくはスマホに奪われているであろう時間のほんのわずかな部分を意識的に読書に割り当てるだけなのですから!

3.読みながら振り返る時間を作る

私たちの読書の価値を下げる大きな要因として、漫然と読むことが挙げられます。
とりわけ、大人になると、いろいろ知っている事も増えてきて、いきおい「あー、なるほどね、はいはい」的に無意識に軽く読み流してしまう(確認して流してしまう)ようになります。
このように深く吟味することなく、自動的に読み進めてしまう読み方を「ゾンビ的(ゾンビモードの)読書」と呼びます。

「ゾンビモードの読書」についての参考記事

一字一句を吟味しながら…というと大袈裟に聞こえるかも知れませんね。
ですが、少なくとも章が終わったら敢えて立ち止まり、その章の整理とまとめを丁寧におこなってみてください。可能なら、昼間読んだ本を夜、寝る前にでも、書籍全体を想い出し(本を開かず記憶だけを頼りに想い出します!)、ノートにまとめていきます。そして再読。
 
これによって、読書を通じて学んだことが整理されるだけでなく、「想い出す」作業によって記憶が強化されますし、それによって「憶えていない部分」も明らかになり、再読がゾンビモードにならず、理解を補強するものに変わるのです。

「章のまとめ」についての参考記事

4.本について誰かと語り合う

読書教育では、子どもの読書指導についても「一人でほったらかして読ませるだけでは読書力向上にはつながらない」とされています。自由で適当な多読は、残念ながら読書スキル(質)にはつながらないのです。
 
ではどうしたらいいかというと、非常に効果的なものの一つとして、目的を持って、読んだ書籍について他者と語り合うことが挙げられています。
 
社会人であれば、自分の読みたいジャンルの書籍や、逆に自分が普段読まないような書籍を課題図書とした読書会に参加することをお勧めします。
まず、「語り合う」前提で読むため、いつもよりも内面の(理解の)モニタリング機能がうまく働くようになると期待できます。自分の分かっていないこと、共感した理由を考えるきっかけになるはずです。
また、語り合う中で、思ってもみなかったことに意見を求められたり、自分とまったく違う意見と出会って、その理由を考えたり…。一人で読んでいては絶対に得られないフィードバックを、語り合う中で手に入れることができるのです!
 
私のお勧めは、会員規模数千名を誇り、全国各地で定例会が行われている(2021年現在、すべてzoomで開催)猫町倶楽部です。

オンラインラウンジに入会することで、様々なzoom読書会に自由に参加できますし、本当にたくさんの分科会が開催されていますので、きっとあなたの読書の世界を広げてくれるはず!
 
もちろん、SRR速読&読書ストラテジーラボ主催の読書会もお勧めですよ。(^^)

5.到達したい行動目標、自分のあり方の目標を作る

自己投資がうまくいっていない人に共通する特徴は、「この読書(自己投資)に何を期待しているか」を具体的かつ明確にしていないということが挙げられます。
この本を読んで、自分はどう変化していたら(あるいは何を達成していたら)満足なのかという期待です。
 
このことについて、経営学の神様、ドラッカーはこう語っています。

イエズス会の修道士やカルヴァン派の牧師は、何か重要な決定をする際に、その期待する結果を書きとめておかなければならないことになっていた。一定期間の後、たとえば九ヶ月後、実際の結果とその期待を見比べなければならなかった。

『プロフェッショナルの条件』(ドラッカー著) p.105-106

これが実現できたら自分のレベルが上がったなと思える目標(数値による到達目標や、「○○な場面で××できる」のような行動目標)を書いて、定期的にチェックする必要がありますね。
 
こちらの画像は私が10年ほど前に作ったものですが、『ビジョナリーカンパニー2』など複数の本を読んだ後に、学んだことを実践できるようにしよう!ということで、カードとして作成し、毎日チェックしていました。

大きめの付箋に書いて手帳に貼り付けておいてもいいかも知れませんね。
大事なことは、毎日チェックすること。期限を決めて確認すること、でしょうか。
 
 
以上、あなたの「投資としての読書」の価値を高めるために、ぜひ採り入れて欲しい読書変革のアクションを5つご紹介してみました。
ぜひ、やれることからやってみて、投資対効果の高い読書を手に入れてください!

追伸:読書のリターンを大きくしよう!

今の自分の読書スキルを越える書籍を読んでいくためにも、「システム」として効果的な読書ストラテジー、学習ストラテジーを学ぶことをお勧めします。

  • どういうタイミングで復習をしたらいいのか。
  • 章のまとめ、書籍全体のまとめをどう書いたらいいのか。
  • 理解を深めるために、どう読み重ねたら効果的なのか。
  • ノートを作るタイミングはいつがいいのか。

そういった読書の「システム」を作るのが読書ストラテジー、学習ストラテジーなのです。
 
この読書ストラテジー学習ストラテジーとセットで速読スキルをマスターすることで、投資としての読書の価値・リターンは非常に大きくなります。
 
ぜひ、こちらの記事を読んでみてください!

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この記事を書いた人

1970年、福岡生まれ。名古屋大学法学部卒業。元福岡県立高校教諭(公民科+小論文)。
現在は九州大学・大学院(博士課程)に在籍し学習ストラテジー、読書ストラテジーを研究。
2001年に教職を辞し独立。教師時代から研究を続けていた高速学習と速読のメソッドを完成させ、その指導にあたる。速読と学習法を学ぶ3-4日間集中講座は98%の高い修得率と高い学習効果が話題を呼び、多くのビジネス書ベストセラー作家や経営者、MBA学生が通う人気ぶり。
 
そのメソッドを公開した書籍『フォーカス・リーディング』は10万部のベストセラー書。その他に読書や学習にまつわる様々な業務に携わった経歴を持つ。
・ベネッセ中学2年生コースの特集記事の指導・監修(2008年)
・西南学院大学での読書力養成講座(通年講座、2014年度から)
・司法書士スクールの高速学習指導(2015年度)
・学習塾経営者への学習法指導、経営指導

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