とても残念なことに、私たちは学校教育を通じて「頭が悪くなる勉強法」を身につけさせられてしまっています。
- 創造性が生まれない、知識偏重の教育
- 個性に応じた取り組みを認めない宿題
- 自主性も自由もない、やらされ感満載の自主学習
- 創意も工夫受け容れない黒板丸写し授業
などなど、あなたもきっと心当たりがあることでしょう。
その中でも私が特に疑問を感じているのが、ノートのとり方です。
実は教育学の研究で学習効果の上がらないノートの特徴として「教科書や先生の話を単語レベルで順番に書きとめる行為」が挙げられています。(「Verbatim(逐語的)なノート」という表現がなされます。)
この無意味なノートのことを、揶揄した言葉として有名なのが、マーク・トウェイン(「トム・ソーヤーの冒険」や「ハックルベリー・フィンの冒険」などの作品で有名な米国の作家)の次の言葉でしょうか。
College is a place where a professor’s lecture notes go straight to the students’ lecture notes, without passing through the brains of either.
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▼(寺田のてきとー訳)
大学ってところは、教授のノートが学生のノートに、誰の脳みそも経由せずに転写される場所なのだよ。
by Mark Twain
日本の小中学校の教育もまったく同じですよね。
教科書を綺麗に整理しただけの板書を、「はい、写しなさい」の指示で、ただ綺麗に書き写すことだけを求めるノート作り。
まさに、知性を微塵も育てないノート作りの典型です。
小中学校時代ならまだしも、社会人になってまで、本を読んだ後に、本を見ながら言葉を単語レベルで書き出してノートを作るような作業をしているとしたら(例えばマインドマップで…とかね)、ちょっともったいない話です。
「ノートを作る」というのは、情報を自分の知性の構造の中に組み込む上で重要な作業。
せっかく時間とエネルギーを使うのであれば、もっと価値のあるノート作りをしてみませんか?
- 情報をノートに残す目的にふさわしいフォーマットやスタイルを考える。
- 自分の既有知識や、他の書籍・講座などで学んだ情報とのリンクを明示的に処理する。
- 情報としてストックするための仕組み、行動を支える指針として活かす仕組みなど「書いた後」につながる工夫をする。
こういうことを考えながらノートを作ることで、間違いなく、あなたの学びはあなたの知性の構造の中に組み込まれていくのです。
ということは、なんですよ…!
ノートはその人の「知性」とか「学び・思考への態度(スタンス)」がそのまま現れるものなんですよ。
天才の着眼点・思考回路はノートに表れる!
ずばり、天才と呼ばれる人の「成果物としての発想や思考」をマネすることができないとしても、それを生み出した着眼点や思考の構造(思考回路)、細かな工夫、気遣いなどはノートにこそ表現されていると考えるべきなのです。
ずばり異論は認めますし、例外も多いことも確かなんですけどね…。
書籍の理解を促進し、読書の学びを深めるノート術
フォーカス・リーディング講座でも読書ノート作りの指導を組み入れています。
このノート(のフォーマット)は、大学教育で多く採用され、世界中で活用法やその効果を研究されている Cornell note-taking(いわゆるコーネルノート)と呼ばれる手法です。
その狙いは、カンタンに言えば「理想とする理解のあり方を、フォーマットを通じて理解する(実践しやすくする)」こと。
もう少し具体的に言いますと…
- 書籍の論点に対する書籍全体の論の構造を俯瞰的に捉える
- 章ごとの論点を明らかにし、それに対する主張の構造を明らかにする
- 章の個性を浮かび上がらせる
- 書籍の情報、主張のフレームと、自分の既有知識とをリンクさせる
- トータルで「書籍からの学び」を最大化することを目指し、ノートを作る過程を通じて、知識の構造化を図る
どういうものか理解していただくために、1つサンプルをご覧頂きましょう。
ノートのつくり方を変えるということは、情報へのフォーカスの仕方が変わるということであり、情報の意図的・戦略的な処理が促されるということでもあり、自分の知識の構造の中に再配置していく形式を変えるということでもあります。
だからこそ、ノート作りというのはすごく重要なことなんですね…!
賢い子のノートは工夫されていた?!
確かに、勉強が得意な子は、先生の話した内容をメモしたり、教科書の図を写したり…そういう工夫をしているということが紹介されることもあります。
私が中学・高校教師時代に指導していた生徒たちにも、黒板に書いたこと以上のことを自分で書き加えたり、整理したりする子はいたものです。
ちなみに、私の教師時代には…
- ノート係を毎回の授業で3名指名し、工夫を凝らしたノートを作らせていました。3冊のノートにどんどん追記されますので、担当になった生徒は友達のノートの工夫を参考にしながら、自分なりにノートの作り方を工夫するようになります。
- 教師を辞める頃は、あえて黒板にはメモ書き以上のことを書かず、授業の最後の15分間を与えて、教科書・資料集と私のトークとを総合してノートを整理する作業をさせ、毎回回収してフィードバックを返していました。
学習効果の上がるノートの特徴とは?
平たく言うと「教科書レベルのことを、小綺麗に、でも機械的に書きとめていくだけ」というだけでは不十分なんですね。
本当に価値のあるノートというのは…
1.書く前の着眼点、整理の視点がユニーク
同じ事を整理するのでも、人によって違いますよね?
どういう着眼点、どういうフォーカスで情報を処理・整理するのかという設計段階の鋭さです。
2.ノートを書いた後に「どう活かすのか?」という発想がある
メモには「保存」機能があるワケですが、それはとりもなおさず「後で活かす」ことが期待されています。
というか、その発想がないため、多くの人に、見返す習慣が生まれないのかも知れません…。
現在、私が指導している教室では、記憶したい用語などは赤のフリクションボールで書かせています。これは赤色の透明下敷きを当てることで、完全に見えなくなるため、記憶再生のトレーニングにそのまま使えるからです。
3.自分の体験、既有知識、周辺情報とのリンクができている
自分がもともと知っていたことや、学習の中で気づいたこと、考えたことをちゃんと書き留めていきます。この作業を通じて、記憶が残りやすく(再生されやすく)なりますし、知識の構造化が促されるものと考えられます。
4.未来の自分に残したい「問い」や「To do」が仕込まれている
メモを取っている時というのは、その作業に集中したいはずです。
なので、「後で深めよう」とか「後で調べて精緻化しよう」といった自分なりの課題が残されていると、次のアクションにつなぎやすくなりますよね。
「自分なりの工夫」には限界があるから…
実際、自分でそういうノートを作れるかというと、自分の思考回路には限界があります。
だからこそ、一流の人はコーチをつけるわけですよ。限界を突破するために。
でも、ノート作りであれば、コーチをつけるまでもなく、「ノート作りがうまい人のノートを真似る」ことで、自分の思考の限界を超えていくことが可能です。
天才の着眼点と思考回路をそのままマネすることはできません。ですから、機械的・闇雲に上手い人のノートを真似ても意味がありません。
彼らのその着眼点と思考回路を理解した上で、そのやり方をモデリングしていくのです。
- その部分に、それを書く理由・狙いは何か?
- どういうタイミングで何を書くべきか?
- 自分の学ぶテーマでは、どういう工夫ができるか?
そういったことを十分に理解して守破離の言葉のとおり、まずは型を守ってマネしてみて、そこから徐々に自分流にアレンジしていきましょう。
書き手の意図が分からないまま形だけマネしても意味がありません。
ですから、ノートのサンプルには…
(1)事例が豊富であること
具体的な書き方を見ないと、マネのしようがありません。
(2)書き方について、意図・ねらいが説明されていること
意図・狙いからはずれない工夫をするためにも必要ですね。
(3)工夫と応用のポイントが示されていること
意図・狙いに沿って発展させていくためにどのようなことを考えればいいかが分かると、応用がしやすくなりますね。
という要素が揃っているものが理想です。
今までも「東大生のノート」とうたった本はありましたが、単にサンプルと簡単な解説が並べられているだけでした。
子ども向けであれば、「自学ノート」のサンプル集があり、書くときのポイント、工夫のポイントなどが書かれているものも多いのですが、いかんせん「学校の成績を上げるための工夫」に過ぎません。
ノートの手本の決定版はこれだ!
私が理想と考えるノート作りの教科書にドンピシャの本が出版されました。まさに「マニアックなまでによくできたノート作りの教科書」とでも言うべき本。学習効果を上げている人の思考回路を盗むための教科書です。
タイトルにある通り、これは単なるノート法の解説書ではありません。
そのノートが作られた着眼点、工夫、手に入れるべき成果が明示的に解説され、さらに応用の仕方まで提案してくれる「天才的な情報処理・整理能力がある人の着眼点と思考回路を、自分の脳みそにインストールする」ためのマニュアルなのです。
書籍の中身はこんな感じ…(チラ見せ)
ノート作りの着眼点と方向性を明示
本書には全54パターンのノートが具体的な例(ノートの写真!)と解説を添えて示されています。
どのような目的、フォーカスで、どのような工夫が施されているのかがよく分かります。これがないと、自分で推測するしかなく、天才の思考回路を盗むことはできませんよね…。
写真で示されたノートのポイントをイラストで解説
このノートを使う価値・意味の確認
方向性と例を示されただけで理解できる人もいると思いますが、親切にもさらに丁寧に工夫のポイント(理解してマネして欲しいポイント)が解説されています。
このノートを使いこなすために留意すべきことのアドバイス
下の画像中、赤い文字で補足していますが(赤字・赤線は寺田注です)、どこに気をつかって欲しいか分かりやすく説明されているので、工夫をするポイントを間違えることがなさそうですね!
ここで得た思考回路を応用的に使うためのポイント
このノート作りの本当の目的は「思考回路のコピー」です。
なので、キレイで分かりやすいノートができただけで喜んではいけないのです。
この部分は「ノート作りを超えて、思考ノウハウを解説する」ようなパートです。しっかりと天才の思考回路を学び、天才と呼ばれる人は何をどのようにとらえて、どう考えているのかを理解しましょう。
もちろん、このようなポイントで読者をナビゲートするという発想をもつということ、それ自体もマネするべきポイントですね!
読書やセミナーなどで学んでいるのに、どうも「受け売り」とか「薄っぺらい真似」の域を抜け出せないとお感じの方、とにかく地頭のパワーを上げていきたいと思っている人は必読ですよ!
『天才の思考回路をコピーする方法』
そういうわけで、勉強をもっと面白くしたいと願う中高生諸君、脳みそをアップグレードしたいと願う社会人諸氏は、ぜひ読んで、ノート作りを変えながら、思考回路を鍛えていきましょう!