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速読は本当に「投資としての読書」の価値を高めうるか?

読書は「自己投資」── そんな風に語られます。
しかし現実問題として、

  • 思うほど、本を読む時間がない。
  • 時間をかけて読んだ割に、頭に残っていない。
  • 人に語れるほど、理解が整理されていない。
  • 読んだ本が積み上がっていく手応えがない。

という悩みを抱え「読書が投資になっていない…(できていない)」と感じている人も多いようです。

ですから、きっと速読を学ぼうとする人は投資に向かうハードルを下げ、さらに投資効果(ROI)を高めたいと考えていらっしゃるはず。

実際、速読技術は、その自己投資のベースを高めるメタスキルです。
だからこそ、私はこのフォーカス・リーディングを大学教育に持ち込みたいと思っていますし、成長意欲の高い社会人の皆さんに学んでいただきたいと思っています。

ただ、速く読めばたくさん読めて、たくさん読めば何かが変わると考えているなら、それは幻想に過ぎないことを最初にお伝えしておきましょう。速さは読書の1つのオプションであり、速読は単なる読書スキルの一部に過ぎません。

とはいえ、速読抜きにして効果的な読書はありえないとも考えられます。
では、速読を本当の意味で「自己投資のベースを高めるメタスキル」にするために何が必要なのでしょうか?

目次

「自己投資としての読書」とは何か?

自己投資」というのは、自分の持っているリソースを、学び(読書)を通じて違うリソースに変換することを言います。こちらの図でいうと、基本的に下半分のリソースをミックスして投入し、上半分のリソースに転換するイメージです。

そして、何か成し遂げたいと思ったら、この6種類のリソースを総動員して目標達成に向けて進んでいくわけです。

未来の目標達成のために、時間・お金・人脈(環境)というリソースを知識・言葉・スキル・体験、マインド、仕組みというリソースに転換するための作業こそが読書。だから、「読書は自己投資」なのです。
ただし「投資」とは言いますが、実質的にその本質は「運用」に他なりません。読んだだけではリソースの転換は起きず、むしろ時間を潰すだけになってしまいます。

自己投資と株式投資はどこが違うか?

自己投資は「投資」と言いながら株式投資とは全然別物なのです。
株式投資ならお金さえ出せば、企業ががんばって営利活動をおこない、配当を出してくれます。配当がなくても、株価の変動の波をつかめれば、大きな利益を生みます。

でも読書はそうではありません。「読む」という時間とお金、そしてコンテンツのインプット作業を本来の投資とみなすなら、それを処理して、思索にふけったり新しいアイディアを出したり、行動に移したりしなければなりません。そこから「仕事等の成果」あるいは「自分自身の成長」に結びついた時、初めて「リターンがあった」と考えるわけです。

どう運用し、リターンを引き出すのか?

お金を出して本を買ったとしても、自動的に運用益が生まれるわけではありません。
本を一読したとしても同じ。
この概念を正しく理解しておかないと、おかしなことが起こります。「よーし、速読でバリバリ本を読んでいけばいいんですねー!」みたいな。

では、いつ運用益、つまりリターンが生まれるのか? まずは下の図をご覧ください。

読書の価値(ROI)を考える式ですが、分母がコストとしての「時間」です。もちろんお金も必要ですね。分子が「リターン」。これは「書籍の価値」と「それを読み取る(吸収する)力」そして、それを何らかの価値に転換する「システム(仕組み)」の掛け算で決まります。

書籍の価値を最大限吸収するだけの読書力は絶対的に必要です。同じ書籍を読んでも、読み方によって吸収できる量も価値も全然変わってしまいます。ただ、ここで考えている「リターンを生む」という点で見ると、読んだ後、本から離れた時のアクションが絶対的に必要です。だから「読書は投資」というなら、本を読むことだけ考えても、冊数を増やすことだけを考えてもダメなのです。

読書における正しい投資と運用とは?

①ビジネス書界隈での投資論

ビジネス書の界隈で語られる読書自己投資論は、かなりいびつな内容が多いので注意が必要です。それは主に短期投資として語られます。大ベストセラー書『レバレッジリーディング』で語られる自己投資論はその典型。

そこでは、投下するのも手に入るリターンも「お金」。運用もその文脈で語られます。

  • 本に書いてある情報を仕事の中に活かすことで、売り上げというリターンが手に入る。
  • そのために、アンテナをしっかりと立てて、ひっかかってくるネタやフレーズを拾い上げるべし。
  • メモは、ブログのためのネタの仕入れ、ビジネスのためのアイディア共有やTo doの記録。

著者は起業家、コンサルタント。書籍で出てくる実例もほぼ経営者・起業家。その意味で、これはこれで「あり」です。上の図の通り「読書力×システム」が所与のものとみなされるからです。

問題はそれに煽られた普通のビジネスパーソンの皆さん。読んだことをブログに抜き書きしてアウトプットした気分に浸る人が続出しました。しかも公然と著作権侵害をして。

そこで抜け落ちていたのは、ブログに抜き書きして手に入るリターンは何なのか?という観点。(実際には、ブログに書くことを推奨して、著者がバイラルマーケティングをしたかっただけだと思うのですが…笑)

②あるべき「自己投資」とは

自分がリターンとして本当に手に入れたいものを、気分とか流行に煽られずに、冷静に見据えて、そこにつながる「その後」につながなければなりません。

先ほど書いたように、あなたが将来、何かを成し遂げたいと思った時、6つのリソースが重要な役割を果たします。その時、上の3つを充実させておくことこそ未来への備えとなりますし、「今の“時間”を投じて、未来の成果を手に入れる」という理想的な長期投資となるはずです。

V=F/Cの式になぞらえていうなら、読書力とシステム(活かすための行動力やビジネス力そのもの)を鍛えるのが、普通の読書のリターンなのです。(下の図)

③「コロンブスの卵」は成果なのか?

ビジネスの世界で評価され、堅実に生きていこうとするなら、投資の最大のリターンとして求めるべきはビジネスで成果を上げることであり、自己成長です。

成果を上げるといっても、ちょっと書いてあるとおりにやったらできた、というレベルではありません。それが自分のものとして再現性高く出力でき、そこからさらに様々な場面で応用できるレベルを目指さなければ。

「コロンブスの卵」を学んだからといって、卵を立てて喜んでいてはダメなのです。
どう恒常的に、既成概念や思い込みを排して、新しい発見や成果につなげるか? これこそが、コロンブスの卵を学んだ人に問われています。

投資の成果を測るための指標を用意しよう!

自己投資とは自己教育であり自己変革。お金と時間、そして材料としての書籍を投下し、思索と行動によって運用して、今までの自分を越えていくことです。

では、そのリターンがどれほど手に入ったのかは、どうやって図ればいいのでしょう?

1.成長のデザインを明確に描こう

まず、本を読む前の段階として、「どんな自分を目指すのか?」という成長のデザインを描いておく必要があります。

  • どんな世界の、どんなステージに立っていて、どんな成果を上げている人になっているのか?
  • どんな知識・スキルを持っていて、どんな態度・マインドを体現しているのか?

未来の自分の構成要素を「心技体」あるいは「知識・スキル・マインド(態度)」という観点で書き出してみてください。

2.行動目標、到達(達成)目標を用意しよう

それが描けたら、具体的な目標として落とし込みます。「○○な場面で、・・・ができる」というような行動目標でもいいでしょうし、何か役職やポスト、肩書きを目標にしてもいいでしょうね。
大切なことは、到達したい期限にそれができているのかどうか評価できるものであること。(いわゆるSMARTな目標というヤツです。(下の記事を参考にどうぞ。)

そして、そこに至るプロセスとしてクリアしていくべきマイルストーン(通過点、KPI=Key Performance Indicator)も設定したいところです。

3.トップダウンで読み方、運用の仕方を考えよう!

ここまで来ると、無駄にブログにアウトプットして「出力した気分」がいかに無駄かは分かるはず。
知識を手に入れるための読書は、知識を使いこなして自分の文脈の中で使いこなせなければ意味がありません。行動を変えるための読書は、あくまで行動することにこそ価値があり、読書はそのヒントに過ぎません。あり方を変える読書は、本を読みながら思索すること、著者と対話し続けることに意味があります。何を理解したかではなく、自分で何を考えたかがすべて。

速読がなぜ自己投資としての読書のレベルを上げるのか?

読書は投資──これは確かですが、本当に得たいリターンは何かまっすぐに見据えた上で、それに見合う読書、行動を考えたいものです。
このとき、速読技術、とりわけ読書の目的や方向性に応じて「ふさわしい読み方」を実現できるような「読書のコントロール技術」が重要な役割を果たすことになります。それは…

1)はずれの本を引きにくくなり、当たりの本を確実にゲットする

自分自身の目指す読書の目的・方向性に応じて、たくさんの本を手当たり次第、下読みすることで「どの本を読めば最高のリターンが得られるか」を判断することができます。

2)学習戦略に基づく効果的な読み方を実現し、学習成果を最大限引き出す

PQRS(Preview-Question-Read-Summarize)やKWHL(Know-WantToKnow-HowToKnow-Learned)などの学習戦略を採用し、効果的に理解と記憶を高めて行くことが可能になります。

3)必要に応じて、気軽に何度でも読み返し、理解と記憶をリフレッシュする

一度学んだことも、時間が経つと理解と記憶があやふやになりがちです。ですが、速読技術があれば、必要に応じてさっと読み返すことができますので、いつでも自在に理解と記憶を新鮮な状態に戻すことが可能になるのです。

「速読」といっても、右脳とか潜在意識みたいな、コントロール不能なものでは意味がありません。
地に足の着いた「学習技法としての速読技術&読書戦略」を学び、あなたの未来を豊かにする自己投資に、積極的に取り組んでいってください!

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この記事を書いた人

1970年、福岡生まれ。名古屋大学法学部卒業。元福岡県立高校教諭(公民科+小論文)。
現在は九州大学・大学院(博士課程)に在籍し学習ストラテジー、読書ストラテジーを研究。
2001年に教職を辞し独立。教師時代から研究を続けていた高速学習と速読のメソッドを完成させ、その指導にあたる。速読と学習法を学ぶ3-4日間集中講座は98%の高い修得率と高い学習効果が話題を呼び、多くのビジネス書ベストセラー作家や経営者、MBA学生が通う人気ぶり。
 
そのメソッドを公開した書籍『フォーカス・リーディング』は10万部のベストセラー書。その他に読書や学習にまつわる様々な業務に携わった経歴を持つ。
・ベネッセ中学2年生コースの特集記事の指導・監修(2008年)
・西南学院大学での読書力養成講座(通年講座、2014年度から)
・司法書士スクールの高速学習指導(2015年度)
・学習塾経営者への学習法指導、経営指導

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