帝京大学・社会学教授 菅野博史
本の読み方は一通りではない。
けれども、私たちは学校教育の結果、もしくは学校教育に不適合を起こした結果、「一字一句を正確に読み取る」という読み方しか知らない。
寺田さんのフォーカス・リーディングは、こうした人びとの読書体験に風穴を空ける画期的な方法である。本に対する焦点の定め方、つまりフォーカスを変えることで、幾通りもの読書体験が可能となり、それによって知識習得のあり方も変化するということを教えてくれるからである。
フォーカス・リーディングを学ぶことは、いわば、漕ぎ方が一通りしかない自転車に変速機をつけて、さまざまな道路を楽しむことができるようになるということである。
速読は変速機の一つであり、読書を楽しむ一つのやり方に過ぎない。このことを知った上で、読書という人生の経験値を上げる実践を、自由自在に楽しめるようになれば、あらゆる人が有意義な人生を送る手立てを手に入れることになるはずである。