がんばって勉強しているのに成績が上がらない?!
一生懸命に勉強しているのに全然成績が上がらず、勉強へのモチベーションが完全に下がりきってしまっている…
そんな学生さんをたくさん見てきました。
例えば、21世紀の教育現場でも、「諦めずにがんばっていれば、ちゃんと努力は実るのよ…」という都市伝説のような学習指導がまかり通っています。
- 漢字を憶えるために、何回も繰り返し書き写す。
- 国語の宿題として毎日音読させる。
- 読書指導として、たくさん読ませる。
- 先生が書いた黒板の内容を、黙々とノートに書き写す。
- 英語に親しむために英文を書き写し、ひたすら音読する。
これらの作業も、正しいやり方(指導)に則っておこなわれるのであれば、まったく効果がないとは言いません。(漢字を何回も書き写す、英語の本文をノートに書き写すなどは、ほぼ無意味な体罰レベルの作業ですが…)
間違ったやり方を先生が堂々と指導してしまうと、子どもたちは「これは正しいやり方なんだ」と解釈して、そのやり方を守り続けてしまう場合があります。
そして、「がんばっているのに、全然手応えがない」という悲しい体験を通じて、勉強嫌いになっていきます。
これは悲劇としか言いようがありません。
世界中にあった!学習系神話の世界
近年、世界的には研究者の努力と学校の先生方の努力とが相俟って、随分、無駄な努力を強いる学習指導は減って来ていると考えられています。エビデンスに基づく学習指導(科学的学習指導・教授ストラテジー)も大事にされてきています。
日本はどうしても次のような文化が色濃く残っているようでして、科学的な、エビデンスに基づく学習指導が一般的になりません。(筆者の主観ですが…当たらずとも遠からずでは?)
- 真面目に取り組む姿勢を大事にする風潮が強い。
- スポーツにおけるウサギ跳びのように、長期的な成果より目の前の「がんばった感」が重視されがち。
- テストの点数よりも、「がんばって勉強した(目に見える)証拠」(ノートなどの提出物)で評価しようとする指導者も多い。
教育関係のこういう思い込みや文化は、昔ながらの伝統的なやり方に倣っている場合が多く、悪意も悪気ないどころか、本人は大真面目に指導している場合がほとんどです。
だからこそ、学習者に与える影響もダメージも大きくなるわけです…。
ただ、調べて見たら欧米にも同じようなことが起こっているらしく、それらは「学習神話(learning myths)」と呼ばれており、どれだけ研究者が啓蒙しても根絶が難しいようです…。
そんな学習神話の侵食実態を認識してもらうための記事がありますので、一緒に見てみましょう!
クイズで理解する「学習神話」の世界
その記事というのは、こちら。
タイトルを日本語訳すると…
「あなたもきっと、学習神話を信じてるゾ。クイズでそれをあばいちゃいましょう!」
というテイスト。(寺田のてきとー訳による)
冒頭から、こんなことが書かれています。
Now throw it away, because highlighters don’t really help people learn.
■寺田のてきとー訳
さぁもう、投げ捨てちゃいましょう!だって蛍光マーカーなんて勉強の役に立ってないんだから。
なんでも、3000人の典型的アメリカ人を調査して、学習に関する、よくある神話(思い込み)を調べたんだとか。
その調査を元に、どういう思い込みがあって、真実はどうなのかということをクイズ形式で紹介しています。
もちろん、正答の解説では、科学的なエビデンスを紹介してくれているので、どういう根拠で、どういうやり方がいいのかも学ぶことが可能です。(^^)
詳しくは当該記事を読んでいただくとして、ポイントをざっと紹介してみましょう。
1.学習に際しては知識などと同じくらいメタ認知力が重要
メタ認知っていうと分かりづらいかも知れません。
「自分が何を分かっていて、何を分かっていないのか」─そんなところですね。
結局、学習効果が上がらない人って「自分が何を、どう分かっていないのかが分かっていない」という大問題を抱えているものです。
こちらの記事でも、これに近い話をしています。参考にどうぞ。
2.テキストを何度も読むよりも、読みながら整理していく方が効果的
川島隆太先生の「音読で脳が活性化する」という話が話題になってから、過度に音読を重視する傾向が学校現場に生まれました。
ですが、音読という受動的に情報を受け止める作業を繰り返しても学習にはなりません。日本語であれ英語であれ。
負荷が小さくていいので、能動的に情報を処理する(できれば思い出す)作業をおこなった方が断然効果的なのです。
3.テストの前は、テキストやまとめを読み直すより、適当な問題に当たった方が効果的
このブログでもたびたび語ってきた話ですが、何度読んだところで、それは「入力」のステップに過ぎません。
本当に出力のレベルを上げたければ、とにかく出力の機会を増やさなければなりません。
ちなみに、「何度も音読する」、「何度も紙に書き写す」のが無意味な理由も同じです。手本を見ながら書いたり音読したりする作業は、脳に負荷を掛けていませんので学習効果が猛烈に低いのです。
4.「その子にあった勉強のスタイル・タイプ」なんてものは無視していい
これは意外に思う人も多いかも知れませんね。
Visual / Auditory / Kinesthetic なんて言い方は結構当たり前に語られてきましたから。
ただ、「だから、誰にでも同じパターンで指導していいよ」ってことではなくって、コスト(手間)と効果を考えつつ、その子にとって効果の上がる方法を選択しようねって話です。
詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ。
5.復習する時は、間(ま)をおいた方がいい
これについては、2022年8月に刊行された「PRESIDENT MOOK 「独学」入門」の中の、心理学者、竹内龍人氏のインタビュー記事にもこう解説されています。
科学的に疑う余地のない「分散効果」に期待
教科書や参考書を漠然と読むだけでは不十分です。テスト形式の勉強を通して自分で想い出す努力を繰り返しながら、「想起」を訓練することが必要なのです。
(中略)
テストの間隔を意識的にあけることによって、より効率的かつ効果的な学習が可能になることがわかっています。
─ 「プレジデントMOOk 「独学」入門 P.38-39
ただしこれも落とし穴があって、「十分に理解できて、とりあえず理解した直後には思い出して内容を語れる」というレベルに到達するまでは間を空けずに追い込んだ方がいいことが分かっています。インタビューでも「テストの間隔」と言っていますが、「出力練習は間を空ける」ことが重要ですが、「入力は一気に!」なのです。
エビングハウスの忘却曲線にしたがって、こまめに復習しましょうというのは大嘘ですが、分散効果が効果的だから授業の復習は時間を空けておこないましょうというのも、やっぱり大嘘なのです。
科学的に効果の上がる学習法を採用しよう!
私が指導した小学生のお子さんでも、先生の指導の仕方が悪かったために、がんばっても成績が上がらず自己効力感が下がりまくって特別支援学級で学ぶことになった子がいました。
3年生に上がるタイミングで私の元にお母さんに連れて来られて指導をおこなった結果、1ヶ月もかからずに普通に勉強ができるようになり、3ヶ月ほどで通常学級に戻ることができました。
知らないと無駄な骨折りになりかねない…というか、ヘタすると人生が破壊されかねません。
今もし、がんばっているのに手応えが…という思いをお持ちなら、一度、学校教育で身につけてしまった学習法を点検して「もっと効果的なやり方はないのか?」と調べてみるといいかも知れません。
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