本を読んでも、時間が経つと結局「忘れてる」んですよ。
マインドマップとか読書のメモとかも創ったことがあるんですが、あんまり効果を感じませんでした…
- 本を読んだのに、数日経つとぼんやりとした印象以上の記憶が残っていない。
- いい本だと思ったはずなのに、人に良さを伝えられない。
- 読んだ内容を人に説明できない。
世の中に「読んだ内容を記憶に残す方法」はあふれていますが、それでもこういった悩みは尽きないようです。
あなたは、読んだ本を記憶に留めておいて、思考や行動に活かせているでしょうか?
もし、それがうまくいっていないようなら、これからご紹介する「読書ノート」が有効な解決策になるかも知れません。
ただし、あなたが「これまでやってきたノート・メモのとり方」を捨てる覚悟があれば、ですが…!
学校教育で身につけてしまった悪癖を捨てるのだ!
書籍などで紹介されるノート法の効果は?
様々な書籍や動画、ウェブメディアでも、様々に効果的なメモ術、ノートのフォーマットが語られてきました。
ただ、誰かが披露する方法というのは、あくまでその発案者の文脈で、すなわち、これまでの経緯・経験、その人の目指す目的、得意・不得意などの条件があって、うまくいっているケース(事例)に過ぎません。
万人にとって効果的なノート法というのは存在しません。好みも、目指す世界も、ベースとなる知識やスキルも人それぞれですから。
誰かのノートを参考にしつつも、あなたの文脈で、あなたの目的(今回の場合、内容を整理して理解を深め、記憶に残すという目的)に合うようなやり方を模索・工夫し続ける必要があるのです。
なので、まずは効果の上がるノートと、上がらないノートの特徴などを理解して、どういう工夫が必要か考えてみましょう。
効果的な読書ノート vs 効果の上がらない読書ノート
実は「学習効果の高いノート法」というのは、随分と昔から研究されてきています。例えば、1950年代から世界中で活用され、研究されてきたCornell Noteがあります(詳細は後ほど)。
- Mueller & Oppenheimer(2014). “The pen is mightier than the keyboard: Advantages of longhand over laptop note taking”
- Slotte & Lonka(1999). “Review and process effects of spontaneous note-taking on text comprehension”
それら研究を踏まえて、効果の上がるノート・上がらないノートの特徴をシンプルに整理すると次のようになります。
残念なノート | ✓教科書などの教材に書かれた単語をそのまま抜き書きする。 ✓教科書などに出てきた順番に単語を整理して並べる。 ✓カテゴリ分けや、整理して書く意図などを設定せず、漫然と書く。 ✓書くときは一生懸命だが、後で見直したり、書き足したりする仕組みがない。 |
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効果的なノート | ✓自分の言葉で言い換えたり、整理したりしながら書く。 ✓教材から学んだ言葉と自分の元々持っていた知識を融合させる工夫をする。 ✓テーマやカテゴリ、中心的なテーマなどを意識して書き方を工夫する。 ✓後で見直して書き足す、自分の言葉で要約する。 ✓新たなテーマを設定してまとめるなどの作業を仕組みにする。 |
脱・学校教育的「黒板写しノート」
効果の上がらないノートというのは、まさに学校教育で推奨されてきたノート。
とすると、残念なノートになっている人というのは、学校教育の「はーい、黒板を写しなさい!」っていう指導の賜と言えるのかも知れません。(爆)
大人になっても、こういう黒板を写す作業の延長にあるような「本に書かれていることを抜き書きする」という感覚が抜けきれないと、どうしても記憶に残らない「書くことに満足する」だけのノートになってしまいます。
あくまでノートは、自分の言葉でまとめる、自分の既知と結びつける、整理・要約するなど主体的な作業になってこそ、初めて意味が生まれるものなのです。
脱・「名言書き抜きメモ」
本を出版する方や、Twitterやブログ等のメディアで発信する方によく見られるのが「書籍から名言をいただく」タイプのメモ。
ここでは書籍を単なる情報ソースとしてとらえ、言葉を拾うだけであり、「書籍で学ぶ」というスタンスではありません。
こういう読書を「点を拾う読書」と呼びます。
名言を常に見返し、暗唱するくらいになれば、自分の行動を変えてくれるかも知れません。
しかし、それをただノートに書き写すだけだったり、ブログやTwitterで発信するだけだったりでは、あなた自身はなにも変わりません。
もし名言を書き抜くなら、その名言について自分で考えたことなどを文章化するなど、主体的に処理することが必要です。
私たちは主体的に教材やテーマに関わろいうという姿勢を持ったとき、そして自分のすでに知っている知識や考えと融合させられたとき、本当の意味で効果的なノート法(学習法)を実現できるものなのです。
- Bonwell & Eison(1991).”Active Learning: Creating Excitement in the Classroom”
- Slotte & Lonka(1999). “Review and process effects of spontaneous note-taking on text comprehension”
脱・タイピングノート
最近だとEvernoteだとか、MindManagerだとか、パソコンやタブレットなどを使ってメモを残す人も多いと思います。これはこれで「記録を残す」という点で便利です。
しかし、こと「学習を目的とするならば」という点で、IT機器の利用は避けた方が無難。
ペンで手書きにすることで脳に負荷がかかります。またスピード的にもスペース的にも無駄が生じるため、工夫して整理しようという意識が働きます。このことが、記憶に残す上で重要なのです。
キーボードはスピードが速く、また耳や目から入った情報をスムーズに出力できるため、どうしても「書かれた(聴いた)言葉通りに打ち込む」傾向が強くなります。ある研究では、工夫してメモをするように指示しても、キーボードを使った場合、学んだ言葉をそのまま断片的に記録する傾向があったと言います。
まさに、先ほど確認した「残念なノート」の典型ですよね!
マッピング式ノートと呼ばれるノート法も、ただ単語を書き並べるノートと較べると学習効果が高いものの、上記のような効果的なノート法で表現されたような方法と較べると、学習効果が低かったという結果が出ています。手書きのマッピングでもそうですから、キーボードでのタイピングではなおさらだろうと推測できます。
それらのメモはあくまで「言葉を忠実に記録に残す資料」としてのメモの場合に使うのがお勧めということになりそうです。
- Mueller & Oppenheimer(2014).”The pen is mightier than the keyboard: Advantages of longhand over laptop note taking”
効果的なノートの具体的な例ってどんなの?
上記「効果的なノート」の代表的なノート法として、アメリカの教育現場で長らく指導され、応用されてきたのが「Cornell note taking system」です。
Cornell Noteの特徴
Cornell Noteは大きく3つのエリアに分けられています。
1.論点エリア
左側の細い欄です。
すべて疑問文になっていることが分かるかと思いますが、この疑問文こそ、ずばり「論点」です。
つまり、どういった論点でメモを作っているのかを示しています。
2.結論とロジック、サンプルのエリア
右側の広いエリアです。
左側の「論点」に答える形で主張や結論、それを支えるロジック、その事例などを書いていきます。
自分のもともと知っていた知識なども、このエリアに書き込んでいくことで、既有知識と新たな学びをより強くリンクさせていくことができ、学習効果が高くなります。
3.まとめエリア
一番下の部分です。
ここには、上の部分に書かれた内容を整理・要約して書き留めます。
Cornell Noteのサンプル
下の画像はインターネットで公開されていた高校化学の授業ノートのサンプルです。
citation from https://jameskennedymonash.wordpress.com/
書籍メモとして採用した例
こちらは、私が大学の授業でコーネルノートを用いた読書メモ作りの指導をおこなった際に、学生さんが書いたものです。
ただし本1冊ではなく、書籍の1つのトピック、約10ページの内容を整理したものです。
論点エリアには、章ごとの論点、キーワード。結論とロジック、サンプルのエリアにはその章のポイント。最後のまとめエリアには、本文の簡単な要約が書かれています。
また、章と章がどのようにリンクしているのかが枠外に簡単に示されていますね。
それだけではなく、下読みをした段階で「この本全体の論点」がフォーマット上部【Q】のエリアに書かれていることがわかります。
こういう工夫されたノートを作ることで、読んだ内容を整理し、記憶に残すことができるようになると考えられます。
記憶を強化するための工夫
実は、大学の読書法の授業でコーネルノート作りの指導をする時は、読んだ後(下読み+理解読みの2回重ね読みの後)に本を見ずに想い出しながらノートを作らせます。その上で、もう想い出せないと思ったら、そこであらためて再読して理解と記憶を補う作業をした上で、もう1度ノート作りに取り組ませるのです。
想い出す作業をリトリーバル(想起)と呼び、その後に再読する作業をリラーニングと呼びますが、この2つの作業をおこなうことで記憶が強化されるのですよ。
どんなノートを作るかということも重要ですが、どう作るかも重要な要素。
ぜひ、今後の読書ノート作りの参考にしてみてください。
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