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「読書はタイパが悪い」と考えるあなたへ─未来を切り開くための読書の方法─

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「読書はタイパが悪い」という思考はどこから来るか?

情報化社会なんて言葉が語られたのも今は昔。
実際、私たちは情報洪水というより情報爆発の時代に生きています。スマートフォン一つあれば、サクサクと世界中の情報にアクセスできますし、わざわざ能動的に情報を検索しなくても、勝手にお勧めされ、流れて来る細切れ情報をピックアップするスタイルが広く受け容れられています。

そういう時代ならでは、でしょうか。
ファスト映画書籍紹介YouTubeの流行,TiktokやYouTube Shortsなど…最近は「コスパ」ならぬ「タイパ(タイム・パフォーマンス)」を計算する人が増えているそうです。

いや、この考え方も見方によっては最近のトレンドというわけではないのかも知れません。
もう20年前から「あらすじで読む名著」なんてものが売れていましたし、書籍の要約サービスも昔からそれなりの需要がありました。

あらすじを何のために読むのでしょうね?

Amazon Kindleの読み上げ機能やら、Audibleやら、書籍の音声版はタイパがいい!という話も耳にします。

わくわくさん

自分で読むより、ポイントが的確にまとめられていますし、何より音声なら「ながら」で理解できるから、まさにタイパ最高ですよ!

逆に「読書はタイパが悪い」と考える人も増えてきているようです。つまり「他の作業とバンドル(抱き合わせ作業)ができない」「処理するスピードを高速化できない」と。

この「読書はタイパが悪い」という発想、あなたはどう考えるでしょうか?
逆に「じゃぁ、速読でタイパを上げればいいじゃん!」と思うでしょうか?

読書時間は“高タイパ”メディアに奪われる?

大学生の不読率が50%を越えた!というニュースが世間を騒がせたのが2018年。この状況は、今もあまり変わっていません。

全国大学生協連合の調査結果を見ると、読書習慣があり、毎日それなりの時間を読書に費やしている層に変動はなく、不読率上昇、読書離れといった言葉は「すき間時間に本を読む」層の減少ととらえるのが妥当です。

寺田

スマホ以前なら、ちょっとした時間に単行本や文庫本を取り出して本を読んでいたかも知れない人が、自然とスマホを取りだして…ということは容易に想像できますよね。

実際、スマホ時間を見ると愕然とします…
日本の大学生のスマホ使用時間は1日平均で約3時間という調査結果があるのですよ(全国大学生協連合)。

でも、Job総研さんの調査結果を見ると、実はもっと多いのかも知れません。

Job総研調査(https://job-q.me/articles/14041
寺田

そりゃ、本を読む暇なんてありませんよね…苦笑

ちなみに全国大学生協連合の2022年調査結果によると、読書時間(電子書籍も含む)の平均は32.7分(ただし、読んだ人の平均は65.0分で、読書時間「0分」が46.4%!)。ちなみに高校生だとスタディサプリさんの会員アンケートによれば、1日平均で約16分。

こういうスマホ時代を反映してか、多くの経営者や大学の先生たちから「何かを学ぶ時、YouTubeとかインスタ、Tiktokで映像やコンパクトなまとめ情報を利用する若者が多い」という話を耳にします。(何か広範な調査結果があるというわけではありません。)

読書の学びはタイパが悪いのか?

読書は確かに時間がかかります。多くの人にとって「読んでも忘れるし、活かせてない」という実感も強いはず。
速読を学びたいという人のほとんどが「時間がない」「読んでも憶えてない」という理由を挙げているのも納得です。

私も速読を考える時にこのような式で「速さ」の価値を説明します。まさにタイパ!

しかし、価値を考える時に「コスト」を計算するのは何かを消費する場合の話。
読書でいえば、「新しい情報を摂取する(情報の新陳代謝)」とか「知らなかった話を知る」、「物語を楽しむ」という方向性です。

寺田

小難しい話をすると、E.フロムが『生きるということ』で書いた「持つ様式」の学び・読書という方向性ですね。現代人の学びは基本的にその方向を向いてしまっていると、フロムは指摘しています。

そしてそれは読書の一面でしかなく、もっと大きな読書の価値が見えていません!

例えばロジックを整理したり、批判的に読んだり、自分の経験や知識と照合したり、自分で要約したり、まとめ動画を作ったり…そういうあなたの能力そのもの(読書力そのものや、分析・批判能力・洞察力)を鍛えるのには、負荷のかかる読書が最適であり、それは時間をかけることで初めて価値が生まれるものなのです。

人を育てるための教育的営みに時間効率を持ち込むのは間違っています。企業経営者が人材育成の時間や資金などのコストを削減して「コスパ」とか言いだしたら無責任だって思いますよね?

動画やインスタのまとめでは得られない、読書だけの効用

では、具体的に「読書に時間をかけることで得られる価値」って何よ?ということなのですが…

人間関係の質アップ!

たとえば、カリフォルニア大学の研究では、定期的に小説を読むことが感情認知のスキルを高めると報告されています。他人の心情を理解し、共感する能力を強化するため、人間関係の質を向上させる可能性がある、と。
当たり前ですが「小説を読む」必要があり、当然、登場人物の心情と共感し、自分自身と対話をしながらの読書、時間をかけて対話し、味わう読書だから生まれるメリットです。
あなたが普段よく読む本がビジネス書や学術系の書籍ばかりなら、名著と呼ばれる作品にじっくりとはまりこむ時間を確保して欲しいものです(自戒を込めて!)。

情報処理力&記憶力アップ!

少なくとも読書教育が実施されている諸国では読書は情報を理解し、記憶する能力を高める(つまり読書量は様々な認知スキルを高める)とされています。
知識や情報をとるだけの読書というのは、「今の自分の読書力(読書スキル)」を前提としますが、科学的な読書法(読書ストラテジー)を活用することで、今の自分のスキルを越えた読書が可能になり、それを地道に繰り返すことで読書スキル、つまり情報処理能力や記憶力が高まっていくものなのです。

日本では読書教育がおこなわれておらず、読書量と学力に相関関係が見出されるという確かな証拠がない(相関しない、という証拠はある)のですが、海外では例えば「理科の成績は読書力に相関している」「読書力は読書量に比例している」とされています。

The Contribution of General Reading Ability to Science Achievement
(一般的な読解力が理科の成績に及ぼす影響)

The Contribution of General Reading Ability to Science Achievement – Reed – 2017 – Reading Research Quarterly – Wiley Online Library

深い知性・洞察力が得られる

科学的な読書法を学ぶことで、読書を通じて新しい視点や洞察力を得たり、自分の考えを深めたり、知識の構造化が進んだりといった効果も期待できます。ただしこれはさらっと一読して満足感を得られるような書籍では到底得られるものではなく、じっくりと噛みしめて読みながら、著者と対話し、文章の向こう側にある社会の文脈や自分の体験と重ね合わせながら読み解いていくような読書、それを可能にする濃くて深い書籍からのみ得られるものなのです。

どんな情報でも瞬時に手に入るこのインターネットの時代に、超多忙な実業家がわざわざ貴重な時間を割いて読書をするというのは、単純に「知識を得る」目的だけではありません。

ビジネスリーダーとしての、あるいは人間としての「洞察力」を高めるためなのです。

超一流の人ほど「読書」を絶対に欠かさない理由 凡庸な人に足りていない、たった1つのこと | リーダーシップ・教養・資格・スキル | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)
寺田

誰かがまとめてくれた情報をありがたがる「消費者」ではなく、そういう情報を生み出せる「生産者」「クリエイター」になりうるわけですよ。

読書は思考のエクササイズであり、プロセスそのものが能力開発になっているわけです。「読書はタイパが悪い」という誤解は、「新しい知識・情報の摂取」という受験勉強的な読書にとらわれた、とても残念な読書観の上に生まれたものだと考えていいでしょう。

読書は情報を得る手段であると同時に、思考力を鍛え、理解力を高め、感情を豊かにする素晴らしい営みなのですよ。そこではタイパが通用しないというより、時間を存分にかけてこそ価値が高まっていくものなのです。

読書の価値を激変させる「科学的な読書法」とは?

そういうわけで、「タイパの悪い読書」こそがインテリジェンス、すなわち知性・知能を高める効果を持ちます。ここで「インテリジェンス」とは、新しい状況に適応したり、複雑な問題を解決したりする能力を指します。

とはいえ、例えば小学校時代からどのような読書をしたら、どのような影響があるかというような話はなかなか難しいところです。「読書」によって育まれる要素も、「インテリジェンス」を構成する要素も多岐にわたるからです。

ですが、本を読みながら、自分自身の頭で考え、反省し、内容について深く理解することが重要──これは間違いありません。具体的には、次のような作業が必要であると考えられます。

  • 章ごとの論点と主張を整理する。全体のテーマや文脈と、個別の情報や主張がどのように関連するのかを読み解く練習につながります。
  • 一冊を読み終わった後に自分で内容を要約したり、感想を書いたりする。これは著者の問題意識と主張の関係、社会的な文脈の中でのその本の価値などを検討する作業であり、分析的に読んだり、批判的に情報を摂取する力に結びつきます。
  • 自分の経験・体験や他の書籍との関連をメモする。情報同士を結びつける作業は「高次リテラシー」と呼ばれる複数の情報ソース(書籍を含む)を統合しつつ、批判的に読む力に結びつきます。

では、そのような作業を効果的におこなうためのストラテジーを、いくつか紹介してみましょう。

インテリジェンス向上のための読書ストラテジー

1.KWHLストラテジー

私たちは目的に応じて行動を選択します。これは読書も同じです。
ストラテジックに(戦略的に)本を読もうと思ったら、まず「この本を読む目的は何か?」を確認するところから始まります。「目的は何か」から「どう読むか」までを考えやすくしてくれるストラテジーがこのKWHLストラテジーです。

  • What I Know;本を読む前に、自分の既有知識を活性化しておくことは、読書の理解を助けることにつながると考えられています。
  • What I Want to Know;ここが読書の目的を考えるステップです。理論を知りたいのか? ノウハウを知りたいのか? 実例を知りたいのか? 何か具体的な課題の解決策が知りたいのか? そういったことを具体的な言葉で考えます。
  • How Will I Learn;目的が定まり、自分の前提知識が確認できたら「では、どのように処理するか」を考えます。学習のステップ、記憶定着のための方法など、科学的な手法から選びたいところです。
  • What I Learned;読み終わったところで、自分が知りたかったことについて、何が得られ、何が得られなかったのかを確認し、「では、さらにどのようなフォローをしようか?」と考えることになります。

2.PQRS(またはSQ4R)ストラテジー

書籍を1度読んで満足するのではなく、戦略的に重ね読みし、ミクロ・マクロのバランスが取れた理解を手に入れようという手法です。PQRSもSQ4Rも基本的には同じ哲学に基づいて作られたものですが、およそ次のような手順で構成されています。

ちなみに、目的を持って能動的・戦略的におこなう読書を「アクティブ・リーディング」と呼び、KWHLストラテジーやPQRS/SQ4Rストラテジーなどはその代表的なストラテジーです。

3.“お勧め書籍”活用ストラテジー

ストラテジーと格好を付けて呼ぶような話ではありませんが(笑)、恐らくは誰もが意識的に活用しているであろう戦略の1つですね。

基本的に、自己投資・自己教育としての読書は、自分が興味のある分野、必要とする情報、自身の読解レベルに基づいて選書しておこなうはずです。「ベストセラーだから」「表紙がいいから」「ランキング上位だから」というのは、何かトレンドを追うような目的がない限り、読書の理由にはなりません。

そこでお勧めなのは、自分が尊敬する人が、「こういう知性を高めるためにお勧めだよ」と紹介してくれる本を読むというものです。
例えば、ビル・ゲイツが毎年発表するお薦めの書籍は、たびたびWebニュースなどで採り上げられますが、参考にする価値があるでしょう。

ただし、こういう「自分が普段読まないお勧め書籍」は、必ず「すべて読み切る」と覚悟を決めることが重要です。
そうしないと、結局、自分の好みとレベルとに引きずられ、偏った読書になってしまいがちです…。

4.ジャンル多角化ストラテジー

知性を高めることを目的とするなら、多様なジャンルから選書し、多角的な視点を手に入れることを考えたいところです。そのために必要なのは「ジャンルを広げる」ことです。

これは、ある特定のテーマについて学ぶ時も同じ。一つの視点だけでなく、異なる視点から情報を得ることは重要です。例えば、気候変動について学ぶなら、科学的な事実を述べる本だけでなく、社会的影響や政治的議論を扱う本も読むなど工夫したいところです。

とりあえず、知性全体の幅を大事にするためには、次のような6つのカテゴリを偏りなく読むことをお勧めします。(「偏りなく」というのは、すべて同じ分量を読みましょうということではありません。)

このスライドは、フォーカス・リーディング講座で使用しているものです。
いろいろ書かれていますが、とりあえず6つのカテゴリの部分だけ確認していただければOKです。

目的をもって能動的に、時間をかけて読もう!

読書は未来を切り開くためき、先の見えない時代をサバイバルする力強いツールです。

新たな情報を取り入れ、自己成長を促すことで、未来の可能性を広げることができます。もちろん、これはタイパのいい速読だろうが、タイパの悪いアクティブ・リーディングだろうが同じこと。

タイパのいい速読を効果的に活用すれば、多くの情報を迅速に処理し、それを自分自身の知識や理解に結びつけることができますし、タイパの悪い読書を効果的に活用すれば、洞察力・分析力・批判力といったインテリジェンスを高めることが可能です。

この2系統の読書によって自分自身を進化・成長させ、より良い未来を切り開くことが可能になります。ぜひ「読書はタイパが悪い」「タイパをよくするために速読だ」と一面的に考えてしまわず、読書の持つ本当の価値を見直して、時間をかけるべき場面では、時間を惜しまず読書に取り組んでいきましょう。

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この記事を書いた人

1970年、福岡生まれ。名古屋大学法学部卒業。元福岡県立高校教諭(公民科+小論文)。
現在は九州大学・大学院(博士課程)に在籍し学習ストラテジー、読書ストラテジーを研究。
2001年に教職を辞し独立。教師時代から研究を続けていた高速学習と速読のメソッドを完成させ、その指導にあたる。速読と学習法を学ぶ3-4日間集中講座は98%の高い修得率と高い学習効果が話題を呼び、多くのビジネス書ベストセラー作家や経営者、MBA学生が通う人気ぶり。
 
そのメソッドを公開した書籍『フォーカス・リーディング』は10万部のベストセラー書。その他に読書や学習にまつわる様々な業務に携わった経歴を持つ。
・ベネッセ中学2年生コースの特集記事の指導・監修(2008年)
・西南学院大学での読書力養成講座(通年講座、2014年度から)
・司法書士スクールの高速学習指導(2015年度)
・学習塾経営者への学習法指導、経営指導

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