今後、AIを使いこなせるだけの知性を持っている人がAIをパートナーとして活用し、そうでない人はAIのアシスタントにならざるをえない…ような時代になりそうな気配が濃厚になってきています。
結局のところAIも「今、持っている知性を拡張する」ものであったり、「持っていない技能を補う」ものであって、あなたの知性の限界がAIを使いこなす限界を決めることになります。
今までもそうでしたが、今まで以上に高いレベルの知性が求められることは間違いありません。
具体的には…
- ある特定の分野に関する深い造詣。
- 幅の広いジャンル・カテゴリを横断的に構築された知識構造。
- 表面的な記憶ではなく、すべてが自分の知性の中で有機的につなぎ、構造化された状態。
- 新たな情報を批判的・論理的に吟味して摂取・消化することで日々進化。
- 様々な背景・文脈(歴史・時代・社会など)を踏まえ、個別の問題を俯瞰的にとらえる視座。
というような話。
chat GPTは知らないことを平気で知ったかぶりでウソをつきます。
また、学習したデータに偏りがあると、まっとうな答えをくれませんし、あくまで「過去に分析されたことがあるデータに基づく判断」を提示してくれているに過ぎません。
結局のところクリエイティブな発想は人間が生み出していくしかありませんし、それは膨大な情報とロジカル・ラテラルな思考回路によって生み出されることは間違いありません。
そういった知性を鍛える一番の方法が「読書」であることは、恐らく誰しも異論のないところなのではないでしょうか。
本は一人で読んでも読書力が高まりづらい!
とはいえ、一人で本を読んでも、なかなか自分の知性のレベルを超えることができません。
だって、自分が分かっていない部分は解消できませんし、自分が分かっていないことに気づかない部分もたくさんあるはずですから。
読書教育の中では「読書ストラテジーなどを理解している大人が、子どもの読書を見守り、フィードバックを送る」ことが最善だと語られます。
つまり読書力アップに不可欠なのが「他者からのフィードバック」なのです。
だったら、その「読書についてのフィードバック」をAIにお願いしたらいいんじゃないの?
と考えるのは自然なことですよね。
ということで、今、話題のchat GPT 4.0に「読書力を高めたいんだけど、あなたにどんなことで協力してもらえますか?」と質問してみました。
AIが提案した7つのAI活用法
1.読んだ内容について質問し、答えてもらう
読んだ内容について疑問がある場合や、理解できない部分がある場合に、私に質問してください。私はその質問に答えることで、あなたの理解を助けます。
AIは著作権のある書物や論文を読みこめないので、質問への回答が正しいかどうかは不明です。
あくまでwebにある情報を学習した結果から返すだけと考えられるので「返ってきた答えの妥当性を検証するスキルが求められる」というお話ですね。
例えば、
2.本の内容を要約してもらう
長い文章や書籍から重要なポイントを抽出するのが難しい場合、私に要約を依頼することができます。これにより、あなたは文章の主要な内容を把握しやすくなります。
そういうわけで、書籍を読んでくれるわけではないので、学習した内容が妥当かどうかは微妙。ちなみに、Web上に公開されている論文であれば読み込んで要約してくれます。
3.知らない語彙や表現などを説明してもらう
読んだ文章で理解できない単語や表現がある場合、私に尋ねてください。私はその単語や表現の意味と使用方法を説明し、あなたの語彙を拡充します。
これは非常に有益かも。Wikipediaよりも使い勝手は大きいと思います。
4.読書リストを提案してもら
あなたの興味やニーズに合った本や記事を読むことで、読解力が向上します。私にあなたの関心分野を教えていただければ、おすすめの読書リストを提案できます。
読書リストは試したことがあるのですが、古い本しか出してこない上に、適当に「ありそうな書名」をでっち上げて教えてくれるのでいちいち点検する必要はありそうです。とはいえAmazonレビューやAmazonレコメンドよりは価値がありそう。
5.読書習慣づくりをサポートしてもらう
読書習慣を構築することが、読解力向上に役立ちます。私は定期的にリマインダーを送ることで、あなたが読書習慣を継続するお手伝いをします。
そういう機能があるんですね…。でも、Googleカレンダーでいいよねという気もしますが、何か他の機能と組み合わせてサポートしてくれるのでしょうか…試してみなければ…。
6.読んだ内容についてディスカッションする
読んだ内容について私とディスカッションすることで、あなたの理解が深まります。私はあなたの意見に対してフィードバックを提供し、新たな視点を提示します。
これは非常に価値がありますね。テーマを決めて自分の意見を書いて、それについてのツッコミや意見をもらうというのは、自分の理解の甘さや穴を発見する上で非常に有意義な体験になります。
7.アウトプットしたものにフィードバックをもらう
読んだ内容をまとめたり、感想や意見を書いたりすることで、読解力を鍛えることができます。私はあなたが書いた文章をチェックし、フィードバックを提供します。
文章を読んだことがないAIが、果たして妥当なフィードバックを返せるかどうかは不明ですが、例えば「論理の一貫性や、事実の見せ方などについてちぇっくしてください」などのような添削のポイントを具体的に示すことで、フィードバックの精度が上がりそうです。
実際に、7をやってもらった!
読書道場のワークに投稿してもらった「書籍を読んでの意見」について、フィードバックをもらいました。
入力したプロンプト
次の○○氏の主張は光文社新書、山森亮著『ベーシック・インカム入門』を読んだ上で、ベーシックインカムについての賛否を表明したものです。
この主張について、論文指導の先生として添削をお願いします。
添削に際しては、次の点に着目してください。
・賛否について、一貫した論理が構築されているか。
・主張に際して、踏まえている事実に誤認がないか。
・主張に対する反論や反駁に対して、応えられるだけの説得力があるか。
○○氏の主張は以下の通り。
「
(省略)
」
もう少し工夫したら、もっと気の利いた答えが返ってきたのかも知れませんね…。この「どう工夫するか」を発想しうる知性を手に入れねばよって話ですかね!
返ってきたアドバイス
1.賛否について一貫した論理が構築されているか。
○○氏はベーシックインカムに賛成の立場を明確にしており、その理由として貧困問題や生活保護の機能不全に対する解決策としてベーシックインカムの導入を提案しています。しかし、主張の中でベーシックインカム/定率所得税(BI/FT)や累進的定率税に言及していますが、その具体的な説明やそれらがベーシックインカム導入の賛否にどのように関連しているのかが不明瞭です。この部分をより詳しく述べることで、一貫した論理が構築されるでしょう。
2.主張に際して、踏まえている事実に誤認がないか。
主張に誤認は見られませんが、いくつかの根拠について具体的なデータや出典を示すことで、説得力を高めることができます。例えば、「ひとり親家庭の貧困率は日本はOECD諸国中もっとも高い」、「子供の貧困率も高い」といった部分について、具体的な数字や出典を示すとより説得力が増します。3.主張に対する反論や反駁に対して、応えられるだけの説得力があるか。
ベーシックインカム導入に対する「働かなくとも生活できるなら働かなくなるのではないか」という反論に対して、ベーシックインカム/定率所得税(BI/FT)や累進的定率税を導入することで働かなくなるとは一概に言えないという意見を述べています。ただし、その説明が十分ではないため、この部分についてもう少し詳しく説明することで、反論に対する説得力を高めることができます。
また、「ベーシックインカムが実際に採用されないのは人々の社会保険に対する高い支持と働かない人にも無条件で給付する嫌悪感が主な理由らしい」という部分も、具体的な出典やデータを示すことで、反論や反駁に対する説得力を高めることができます。さらに、高所得者がベーシックインカムに反対している理由として「もっと税金を支払うことになるから」という主張も示していますが、こちらも具体的な証拠や出典を提示することが望ましいです。
全体的に、○○氏の主張はベーシックインカム導入に賛成の立場を取っており、その理由として貧困問題や生活保護の機能不全に対する解決策を述べています。しかし、いくつかの部分では具体的な説明や根拠が不足しており、反論や反駁に対する説得力を高めるためにも、より詳細な情報や出典を示すことが重要です。また、ベーシックインカム/定率所得税(BI/FT)や累進的定率税についての説明を充実させ、それらがベーシックインカム導入の賛否にどのように関連しているのかを明確にすることで、一貫した論理を構築することができます。
具体的な説明や根拠が示されていないのは、「本に書いてあることを踏まえた主張」だからですし、文字数が800文字と限られていますので、そのせいですね。
結論
自分の理解や感想が適切なものであったか等、出力をチェックすることによってしか、自分の読書(の理解)を修正したり、読み方を変えたりすることができません。
指導者の下で個別にチェックをしてもらうのはなかなか大変ですし、読書会のような環境で「自分の読みたい本についてのフィードバック」が得られるとは限りません。
そう考えると、chat GPTを相手に「一人で壁打ちをしながら、さらにフィードバックまでもらえる」とすると、これはかなり有効な読書力アップのツールになりそうです。
ぜひあなたも、話題のAIを、単に暇つぶしに体験してみるだけではなく、自分の知性を高めるための伴走者として活用してみてください!
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