本を読んでも、その時は盛り上がるし、いいなと思った言葉をTwitterに投稿したりもするんですが、結局、記憶に残ってなくって…。
出力につながっていないというか、役に立っていない気がするんですよ…
あなたは、本を読んだら、ちゃんと何かしらの「力」が高まっていると実感できているでしょうか?
その力は半年あるいは1年経った頃に、「あの本で学んだ知識が、活かせているな」と実感できるものですか?
実感がない…そうお感じなら、ちょっと振り返って考えてみてください。
試験を受ける時、きっと、その前に徹底的に勉強をしたはずです。
スポーツの試合があるなら、やっぱりその前に徹底的に練習したはずです。
そして、できなかったことができるようになる実感を得てきたはずです。
んで、読書はどうかな?
なぜか読書となると、事前のトレーニングもしないし、実戦の結果も確認しない…そんな雑で適当な実践では、恐らくあなたの読書が何かの成長に結びつくとは到底思えないわけです。
「読書の進化」を生むための3つの方法
ここで目指す読書は「ノウハウや知識・情報を学び、何かの目的を達成する」ためのものではなく、読書そのものの基礎力を高め、あなたの読書を進化させるためのもの。つまり、「読書そのものが目的」になっている読書です。
そこで手に入れたいのは、「新しい言葉」と「新しい概念」、そして「思考力」です。
言葉が変わると、世界の見え方が変わります。
概念が変わると、世界の見方が変わります。
思考力が変わると、世界を見る深さが変わります。
具体的に、その3つの方法とは・・・
1.読書力そのものを高める
なにやら自己参照的なトートロジーになってしまいますが、とても大事なことなのです。
そして、ここでいう「読書力そのもの」というのは、次のような要素からなっています。
- その本の論点・主張、各章の論点・主張を確認する
その本全体、あるいは各章に設定された問題意識としての「問い」です。国語で「問題提起」と呼ばれていたやつですが、明示的に「問い」として表現されているとは限りません。それを的確につかめるようにしたいところです。 - 接続詞・指示語にチェックを入れながら分析的に読む(ミクロの読解)
社会人はあまり必要ないかも知れません。高校生までの読解ではトレーニングとして、この作業を丁寧にやると読解力アップにつながります。 - 章立て、全体の主張の構造を把握するためにメモを作る(マクロの読解)
本全体の論理構成、章と章のつながりが見えるような工夫をすることで、「書籍全体」の主張がつかみやすくなりますし、深い理解が得られます。 - 自分のもともと知っていた事例、知識と対比しながら、その相似点・相違点を確認する
- 自分の知らなかった概念や知識・情報を把握し、解消する
これらの要素は自然と身につくものではありませんので、意識的な作業として丁寧に読解に取り組む必要がありますし、自分が考えたものが適切だったかどうかを確認する必要があります。ですから、そのようなことが学べるワークショップ等に参加し、指導者の下で学ぶ事をお勧めします。
また、3と4についてはある程度の速読スキル(フォーカスを変えて読むスキル)がないと、なかなか難しいのも事実。読書の学びを深め、読書そのものを進化させるためには速読も必須スキルと考えましょう。
さらに、上記5項目の読解力を支える土台として、次の3つの要素が求められます。
- 語彙、汎用性の高い思考力、論理力
- 学びたいと思うジャンルの知識
- 背景にある社会的知識
このグレー枠内の3つの要素については、
- 幅の広いジャンルの書籍を大量に読んでいくこと
- 難しい本を丁寧に読み、誰かと本の内容についてディスカッションすること
といった作業で高めていくことが可能です。
とりわけ、やや難しめの学術系入門書に挑戦すると「分かる」と「分からない」が明らかになりやすく、そこを「分かろうと努力する」ことで鍛えられます。
これが「3.ちょっと難しめの本に挑戦する」につながるわけです。
2.読書ストラテジーを身につける
読書ストラテジーは本の読み方の技術であり、効果的な学習法としての読書法です。
読書スキルが自動的に(無意識に)発動される「身についた能力」であるのに対して、ストラテジーは、ある目的に対して効果的な技法を選択的に実行することを指します。自分の能力(スキル)のレベルを超えたものを読む場合や、高い目標に挑む場合に必要とされるものです。
例えば、世界的に有名な「MARSI」と呼ばれる読書ストラテジーのリストには、このようなものが典型的なものとして列挙されています。
- 読むときに目的を持っている。
- 私は、読書中にメモを取り、読書の内容を理解するのに役立てている。
- 読んでいる内容を理解するために、自分の知っていることを考える。
- 読む前に、その文章がどんな内容か予習する。
- 文章が難しくなったら、音読して内容を理解する。
- 要約を書き、本文中の重要なアイデアを考察する。
- 本文の内容が自分の目的に合っているかどうかを考える。
- ゆっくり、ていねいに読んで、内容を理解する。
- 読んだ内容を他の人と話し合い、理解度を確認する。
- 文章の長さや構成などの特徴に注目しながら、まずざっと読みます。
- 集中力が途切れたら、元に戻ろうとする。
- 文章中の情報に下線を引いたり、丸を付けたりして、覚えやすくしている。
- 読む内容に応じて、読むスピードを調節している。
- よく読むところと無視するところを決めている。
- 辞書などの参考資料を使って、理解しやすくしている。
- 16.文章が難しくなってきたら、読んでいる文章に注目するようになった。
- 17.文章中の表や図、絵などを使って、理解を深めることができる。
- 時々立ち止まって、読んでいる内容について考える。
- 文脈の手がかりを使って、読んでいる内容をよりよく理解する。
- 私は、読んでいる内容をよりよく理解するために、パラフレーズ(自分の言葉で考えを言い換えること)をします。
- 読んだ内容を思い出すために、情報を絵に描いたり、視覚化しようとする。
- 重要な情報を識別するために、太字や斜体などの組版補助を使用する。
- 私は、テキストに記載されている情報を批判的に分析し、評価します。
- 私は、文章を何度も読み返し、文章中のアイデアの関連性を見つけることができる。
- 私は、矛盾する情報に出会ったとき、自分の理解を確認する。
- 文章の内容を推測して読むようにしている。
- 文章が難しくなったら、読み返して理解度を高める。
- 文章に書かれていたらいいなと思うことを自分に質問してみる。
- 自分の推測が正しいか間違っているか確認する。
- 知らない単語やフレーズの意味を推測してみる。
Mokhtari, K., & Reichard, C. A. (2002). Assessing students’ metacognitive awareness of reading strategies. Journal of educational psychology, 94(2), 249.
1の「読書力そのもの」は日々の読書を通じて地道に鍛えていく必要があります。しかし、こちらの戦略は知識として学ぶことができますし、何よりどんな読書ストラテジーがあるのかということを知っているだけで、読書が変わる可能性があるとされています。これについては、以下の記事を参照してみてください。
3.ちょっと難しめの本に挑戦する
ちょっと難しめの本ってどんな本ですか?
何はともあれ新書を読みましょう。新書。
その中でのお勧めはと申しますと…講談社現代新書(ただし、2004年以前のもの)です。
例えば、『タテ社会の人間関係』
この本などは、内容も「社会のとらえ方を学ぶ」という点で学ぶべきことも多く、しかも文章がほどよく硬派。出版から50年が経過してなお読まれており、通算100万部を突破している…と聞けば、その価値は分かるかと。
あるいは『生物と無生物のあいだ』もお勧めです。(^^)
(これは2007年刊ですが良書!)
この2冊に代表されるシリーズです。このシリーズは、知的好奇心を刺激してくれる内容に加えて、学術的な内容でありながら、非常に読みやすく編集されているのが特徴です。面白くないと読む気がしませんし、ちょっと学術的、論理的に書かれていないと鍛えられませんし。その両方を兼ね備えているということで、ぜひチャレンジしていただきたな、と。
その次に進むとしたら中公新書、岩波新書です。
例えば、『安心社会から信頼社会へ』。
『ゾウの時間、ネズミの時間』も、超お薦め。
こちらは理系の本で、非常にロジカルに書かれていながら内容が非常に刺激的で、ぐいぐいと引き込まれます。(内容的に面白く、絵本バージョンまで出版されています!)
ちょっと難しめの本を何度も読もう!
こういう本を、何度も読むことが重要です。
1で紹介したような要素を意識して、マクロの構造とミクロの分析とを、バランスが取れるまで読み込むこと。
可能ならノートを取りながら読むこと。漫然と読んでいては、何度読み重ねても、何冊読んでも、レベルが上がることはありませんので、読み方から変えましょう。
まとめ
ということで、読書力を高めるための本の読み方について、ポイントを3つご紹介しました。
読書力を構成する5つの要素を意識的に鍛えること。読書ストラテジーを学ぶこと。できれば速読スキルも身につけること。そしてちょっと難しめの本の代表として新書を読むこと。
こういったことを意識的におこなうことで、あなたの読書力はどんどん進化していきます。
ぜひ、人生を変える「価値ある読書」を手に入れましょう!
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